月城まりあの手記

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白雲の詩

――青い空、白い雲、そよぐ草、その向こう
   早く行こう 大切なあの人が 待っているから――


久しぶりに、MMOROG「マビノギ」のSSを書いてみました。
ちょっとだけ変化したLunamariaと、まだまだ冒険盛りのSefiliaの物語。

お楽しみ頂ければ幸いです。本文は追記からどうぞ。




 エリンの空は澄んでいて気持ちがいい。ことに冬の夜空は格別である。皆が寝静まる頃、家々の明かりが消えると何処までも遠く瞬く星が続く。
「まだ起きていたんですか?体に障りますよ。」
「あ、ばれちゃった。えへへ、大丈夫大丈夫、すぐに眠るから。」
 夜風の中にたたずんでいた女性が、優しいテノールの声に応じて振り向いた。
 ここはダンバートン郊外、南西部。ふたりはそれぞれ人間とエルフの冒険者だ。
「ふふ、あんまりにも綺麗だから……本当はもうちょっと見ていたいんだけどな。」
 ふいに、女性の腰まである黒髪がふわりとなびく。あわせるように、身に纏う漆黒の修道服の裾が揺れる。
「それなら、またフィリアに行ってみますか?砂漠の星空は僕も気に入ってますから。」
「そうね。それも良いかもしれない……ああ、懐かしいわね。初めてフィリアに行った頃、私はまだ剣を取っていたんだわ。」
「ルナさん……。」
「あはは、しんみりしちゃうなんて、私の柄じゃないわよね。気にしないで、セフィ。」
 ルナは、ころころと笑って彼の肩を軽く叩くと、設営済みのテントへ入っていった。
 それに続くように、セフィと呼ばれたエルフの青年――Sefiliaも中へ姿を消した。

 ルナが剣を置いたのは、つい最近のことだった。
 彼女――Lunamariaはかつて、敏腕の冒険者の一人であった。数多の死線をかいくぐり、また世界各地を仲間と共に飛び回り、新たに冒険者としてソウルストリームから辿り着いた人々を導きもした。彼女を慕う人の数も少なく無く、剣を置いた今でも交流のある冒険者も多い。
 そんな彼女が剣をおいて修道士の道を選んだのは、どのような理由であったからだろうか。それはまだ、誰の口からも明かされていない。勿論Sefiliaの知るところでもない。それでも彼は、いつか訪れる別れの日まで、Lunamariaの助手を務めていたいと思っている……彼もまた、Lunamariaを慕う一人なのである。

 就寝前の祈りを終えて床につく直前、Lunamariaは見張りのために弓を整えるSefiliaに声をかけた。
「明日、久しぶりの遠出になるのね。楽しみだわ。」
「そうですね。このところずっと、ルナさんは街で仕事をしては祈るばかりの日々でしたから。」
「そうね。ふふ、カスタネア様、お元気かしら?」
「ご挨拶に行けば喜んでくれるはずですよ。本当は、その後一緒にダンジョンへ狩りにでもと誘いたいところですが。」
「お気持ちだけ頂くわ、ありがとう。もう今は……そういうのは、次世代の冒険者に譲るべきなのよ、私は。」
 それから、それじゃあおやすみなさい、と一度微笑んで、彼女はすぐ眠りについてしまった。Sefiliaは小さく溜息をついてから外へ出た。6時間後にLunamariaと交代して眠るまでは、彼が見張り役を勤めるのが日課だ。
「そういえば……ルナさん、夜の見張りでも全然武器を持たないな。」
 ふと気がついて、小さく呟いた。
 恐らく彼女ならば武器など無くとも強力な魔法攻撃で対処することが出来るだろう。彼女の魔法の威力は中々侮りがたい。それに素手での格闘すら、下級魔族ぐらいなら一撃必殺するほどの力量の持ち主だ。Sefiliaが心配したのはそういう事ではない。
「本当に、一切の戦いから退くつもりなのかな……。」
 問いかけを聞いた夜風が答えを持っているはずも無く。小さな声はあっという間に冷気に白くにごって溶けた。

 翌朝――。
「出航まであと3分か……待ち遠しいな。」
船長のカラジェックに挨拶を終え、Lunamariaは甲板に立った。その後から馬を預け終えたSefiliaがやってきて隣に並ぶ。
「カラジェック船長とはもう少し話さなくていいんですか?」
「うん、元気そうで何よりだし、他の冒険者の子達が話したいでしょうしね。私が時間貰ってちゃ悪いわよ。」
 Sefiliaの問いかけにこともなげにそう言って、Lunamariaは微笑んでみせた。華やかに輝くそれは、Sefiliaにはとても偽りの笑みには見えない。
「……どうしてですか?」
「何が、どうしてなの?」
 気がつけば、Sefiliaの口から疑問がこぼれていた。思わぬ問いにLunamariaも大きな瞳を丸くして首を傾げた。
 出てしまった言葉は消せない。Sefiliaは、思い切って尋ねる事にした。何故、剣を置いたのか。何故、他の冒険者に譲るなどということばかり考えるのか。

「……そっか、ごめんね。心配させちゃっていたのね。大丈夫!間違ってもエリンの冒険者を辞めることは無いから!」
 一頻り聞き終えたLunamariaは、海風を受けながら、ばつが悪そうに苦笑を浮かべてそう断言した。
「確かに、今は修道士として静かに暮らしているけれど、必要な時がくればきちんと剣を取って戦う覚悟はあるわ。ただ、この世界は老いることも死ぬこともない……だから、『世代を譲る』ってことが、意識しないと行われないなって思ったの。」
「『世代を譲る』ですか……?」
「そう。ほら、私なんてソウルストリームからエリンへやってきて、何度も何度も転生を繰り返しているから、外見年齢こそ18歳だけど、本当はもう240年以上エリンで暮らしているのよ。その間にもたくさんの人達が私と同じようにソウルストリームからエリンへやってきている……それでも私がずっと前線にいたら、いくらまだまだ未知の多いエリンといってもきっとパンクしちゃうわ。」
「……良く意味が分かりません。」
 Sefiliaが理解できない、という風に顔をしかめた。Lunamariaはごめんね、と謝ってから逡巡の後、再び口を開いた。
「そうだなあ……物々交換でいろんなものを譲り合うとか、真心で何かを譲り合うって、大事でしょう?」
「はい、それはそう思います。」
「それと同じで、経験の譲り合いも大事だと思うの。そうして遥かな歴史は紡がれ、掛けがえの無い命は受け継がれていくのだから。でもそれって、年老いることなく死ぬことなく、生きていられてしまうエリンではとてもうっかりしやすい譲り合いだと思うのよ。」
「経験の譲り合い、ですか?」
「そう、経験の譲り合い。きっと大事なはずのこと。」
 不意に、到着を告げる船員の声が響いた。二人にとって久しぶりのイリア大陸に、船が着いたのだ。

 下船しながら、SefiliaはLunamariaの話を反芻していた。いまひとつ理解しきれないのは、何が原因なのだろうか。
「セフィ、早く行こうよ!」
 遠くからLunamariaの声がする。反射的に思考を中断して見やれば、既にベースキャンプ入り口に立って手を振る小さな修道服が見えた。
「あ、はい!待ってください、ルナさん!」
 馬を連れて彼女の元へと歩を進める。いつか、彼女が船上で聞かせてくれた話を自分も理解できる日が来るだろうかと考えながら。
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ゲーマー&ドールオーナーの、日記のようなblogです。たわいもないことをつづっています。
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ボークス製球体関節人形「スーパードルフィー(Super Dollfie)」が好きな初心者ドールオーナー。他社・海外ドールも興味はあるけれどまだまだ無知で恐縮です。
我が家には春歌(MSDG サクラ)、きよし(SD13B リンク)、ちか(幼SDG ちか)、幸彦(SDGrB F-30)の4人が居ます。

他にも、オンラインゲーム「マビノギ」が大好きというゲーマーでもあります。タルラークサーバにて暮らすようにプレイ中。家事の合間に農園や楽器演奏などをしてのんびり暮らしています。

さらに、のんびり屋審神者でもあります。
イベントは全力で、普段はゆるゆると、刀剣男士たちと過ごしています。