月城まりあの手記

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冬菫

昨日、突発的に書きたくなった組み合わせのSS(というより、その断片)です。
泰花(b58524)と理人さん(b68087)のお話。
お楽しみ頂ければ幸いです。本文は追記からどうぞ。


※2010年10月3日 挿絵が付きました。(by Mouさん)


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 ふわり、と湯気が舞う。淹れたての温かい緑茶といくらかの菓子。ほんのささやかな、午後のひと時。
「お茶のお代わりは、如何ですか?」
 ふと、泰花が理人に問う。理人は静かに湯飲みを差し出した。
「……ありがたい。」
「はい、どうぞ。」
 ことり、と急須を置く音だけが聞こえる。静かな静かな冬の桜咲荘。ことに今朝は雪が降った。雪は全ての音を吸い込んでしまう。
「春が待ち遠しゅうございますね。今朝は本当に寒くて驚きました。私の実家では、雪など滅多に降りませんでしたものですから。」
 泰花が見やれば、窓の向こうに枝を広げる桜の大樹には満開の花の様に雪が積もっている。理人も読みかけの文庫に栞を挟み、倣ってそれを見やった。
「理人さん。」
「……何だ?」
「この半年と少しで、随分丸くなられましたね。ふふ。」
「そうか……?」
「ええ、とても。まだお会いして間もない頃は、私が外を眺めていても、読書を中断して応じて下さることはありませんでしたもの。」
 そう話す泰花の表情は、何時に無く柔らかい。理人はそんな泰花を一瞥すると、再び外へと目をやった。すると、小さく、ふふという声がした。
「そうでした、理人さん。」
「……どうした?」
「今度、依頼に赴かれるのですよね。確かそれでお役立て頂けそうなものを見つけて……。」
「ああ……探さずともいい。気持ちだけ貰おう。」
 立ち上がりかけた泰花の手を、理人が軽く引いて制した。
「まあ、ですが……。」
「私の役に立つなら、泰花にも役に立つのだろう。とっておけ。」
「そうですか。そう仰いますなら……ありがたく。」
 座りなおしながらくすくすと笑う泰花の声が、少し褪せた畳にこぼれる。
「……冬菫、か。」
「はい……?」
 唐突な言葉に、泰花は小首を傾げた。しかし理人は構わずに続ける。
「そなたを見ていて、そう思った……雪を割り咲く、菫と。」
「雪割り菫、ですか……そのように逞しくあれたら、良いのですが。」
「初夏に咲くはずの菫が、秋も冬も変わらずに微笑み咲き、温かな気持ちを届けてくれる……。」
 ことり、湯飲みを置く音が卓袱台に響く。
「ああ、ならばそなたは、かつての巫女にも良く似ている……。」
「花枝さんに……?」
「そう。よく笑い、よく気にかけてくれ……その癖、自分自身のことには少し鈍いところなど。」
「まあ、理人さんたら……。」
 くすくすと軽やかな声で泰花が笑う。理人も、少しだけ目元を緩ませた。
「……さて、また邪魔させてもらうとしよう。馳走になったな。」
「いいえ。私も久しぶりに二人で過ごせて良うございました。こうしてゆっくりできましたのも、半年振りでしたものね。またいつか、機会がありましたら。」
 泰花は立ち上がって、理人を玄関まで見送る。藍色の狩衣の背が階段の影に隠れてから、扉を閉めた。
「冬菫……それでは理人さんは、花守りの蜘蛛ですね。折に触れて、私や皆さんのことを案じて下さるのですから。」
 ひとり、ぽつりと呟く。

 桜木の枝が軋んで、積雪が俄かに零れ落ちた。

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ゲーマー&ドールオーナーの、日記のようなblogです。たわいもないことをつづっています。
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ボークス製球体関節人形「スーパードルフィー(Super Dollfie)」が好きな初心者ドールオーナー。他社・海外ドールも興味はあるけれどまだまだ無知で恐縮です。
我が家には春歌(MSDG サクラ)、きよし(SD13B リンク)、ちか(幼SDG ちか)、幸彦(SDGrB F-30)の4人が居ます。

他にも、オンラインゲーム「マビノギ」が大好きというゲーマーでもあります。タルラークサーバにて暮らすようにプレイ中。家事の合間に農園や楽器演奏などをしてのんびり暮らしています。

さらに、のんびり屋審神者でもあります。
イベントは全力で、普段はゆるゆると、刀剣男士たちと過ごしています。