月城まりあの手記

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葉月三日

書き始めるまでが長いものの、書き始めてしまうと続けてどんどん書いてしまいます。ヽ(*・ω・)ノ
そんな訳で今回は理人さんのお話。夏真っ盛りのお話、かつ、ちょっと長いお話、さらに今回は私視点のお話です。ご了承下さい。
話の内容としては理人さん視点でもよかったんだろうけど、心情の描写がちょっと難しかったんです……orz

お楽しみ頂ければ幸いです。



(泰花のとこにも遊びに行った。香月くんとこにも遊びに行った。図書館も行ったし調べたいことも一通り調べた……。)

2009年8月3日。
銀誓館学園大図書館の正門を抜けたところで、私は今日の用事を振り返った。見つけられなかったり読み切れなかったりした資料はあるけれど、一応これでやり残したことはないはず。

「……よし、鎌倉で遊んで帰ろう!」

ぐっと拳をにぎりしめて宣言。鎌倉はお菓子もおいしいし大仏もあるし、個人的にお気に入りの街。今日も帰りは豊島屋の鳩サブレと鎌倉五郎の半月を買って帰るんだいっ★
意気揚々と歩き出す足は軽い。特に今は夏真っ盛り。私の大好きな季節だ。夏は私の元気の源、四季から夏が消えたら私は生きていけないだろうって思うくらい好き。
耳に心地よく響く蝉時雨を聞きながらるんるんと暫く歩き、やがて横断歩道に立ち――。

(おぉ!?あそこ歩いてるの、着物の男の人だ!珍し~い……。)

たまたま振り返った視線の先にいた、藍色の狩衣に釘付けになった。そもそも現代に着物の男の人っていうだけでもレアなのに、狩衣とはさらにレアである。てっきり泰花の家の門下生達くらいしか着ていないものと思っていた。しかし彼らが着るのは白や色の薄い狩衣である。目の前の人物は泰花の家の門下生という訳ではなさそうだった。

(うわ~……きれーい。)

不躾とは思ったが、つい見とれてしまう。優雅な足の運び。日差しを浴びて煌めいている、膝裏程まで伸ばされた漆黒の髪。伏し目がちにしている、きりりと引き締まった端正な顔立ち。どれもまるで『源氏物語』か何かから飛び出て来たかのようだ。
その彼の歩みが、ふと止まる。ゆら、と長い髪が動きにあわせて振れた。なにやら小さなメモのようなものを見ながら不思議そうに辺りを見回して――激しく車の行きかう道へ踏み出した。

「っちょ、危ないってば!?待ちなさいっ!」

私は、最早条件反射とも言うべき速さで行動に出ていた。自分が気がついたときには、既に彼の腕をしっかり掴んでいるところを、訝しげに見つめられているところだった。真紅の瞳は切れ長で鋭く、一瞬私の鼓動は跳ね上がった。

「あ、えと……急にすみません。車道に出るなんてびっくりしたものですから、その……えへへ。」
「……そうか。」

慌てて手を離して謝罪した私に帰ってきたのは、たった一言。そのまま再びメモらしきものに目を落として黙ってしまった彼に、私は不快感を覚えるというよりは呆気に取られた。けれど驚いて見やっても、彼は表情一つ変えない。

「あの、どこかこの近くにご用事なんですか?もし道に迷ったんなら、少しならご案内できそうですけど……。」

……反応なし。がびーん。

(てっきり、手書きの地図か何かだと思ったんだけどなぁ……?)

うーむ、と私はすっかり自分のことも忘れて首をひねった。遠目にも背の高い人物だとは思ったが、こうして近くに立ってみると彼のほうが私よりも25cm近く背が高い。だから手に持っているメモには何が書いてあるのかよく見えな…………あら?

「あら、それ……。」

ふと彼の懐から覗いていた紙に目が留まった。今年の初頭から長く関わってきた学園の校章はもうすっかり見慣れて、この時も一部しか見えていなくても一発でそれと分かった。
駄目もとでもう一度話しかけてみる。これで反応が無かったら諦めよう、思えばあたしこれから遊びに行くんだったんじゃない、などと思いながら。

「あの、それって銀誓館学園の入学書類ですよね?ひょっとして、手続きしに行くんじゃないんですか?もしよかったら近いキャンパスわかりますから、案内しますよ。」
「…………。」

漸く反応があった。紅い瞳がすっと動き、私を捉える。それからやや間があって、彼は口を開いた。

「……そなたは、何者だ?」
「あ、そうか。自己紹介してませんでした、すみません。私、月城まりあっていうんです。ただの人だけど、銀誓館学園の関係者のひとり……って言えばいいのかな?」
「…………。」
「あの、えと……?」

困った。また黙られた。何かとんちんかんな返事でもしただろうか?と急に不安になるものの、おかしなことは言わなかったはずだと思い直す。それに黙られてはしまったが、彼も何か思案している風だった。じっと、私の目を見ている。

「あのあの、もし今日手続きに行くなら、早くしないと事務室閉まっちゃいますよ?さ、行きましょ?案内しますからっ。」
「……わかった…。」
「ふふ、よかった。」

彼の返事で、私は同時に二つのことに納得がいき、安心感を覚えた。一つ目は、彼ともちゃんと話が出来るということ。二つ目は……

「集中講義で聴いただけじゃ、わかんないことまだ多いですよね。良かったです、あなたのお力になれそうで。土蜘蛛さんっ。」
「……!」

ふと、彼の歩みが止まった。無表情だった顔にも、僅かに驚きの色が現れている。

「ふふ、武器持ってない状態じゃ土蜘蛛さんか鋏角衆さんかまでは分からないですけど……どちらかでしょう?あなた。」
「………そうだ。土蜘蛛の、武田理人という…。」
「武田理人さんね。よろしくお願いします。」

なんと名乗ってくれた。予想以上の反応!!と思いつつ会釈を返す。
でもその後はやっぱりというのか、学園に着くまでの間、ほとんど私が一方的に喋っていた。道順の案内とか、どうやって見抜いたのかとか、鎌倉のおいしいお菓子の話とか、泰花や香月くんの家の話とか……その他あれこれ。

「……ふぅ。いっぱい喋ってたら汗ばんできちゃった。はい、ここが学園の事務室ですよ。それじゃ私はここまでですかね。じゃあ……」
「…………待て。」
「へ?」

思いもかけず呼び止められて、思い切り間抜けな声を出してしまった。うぅ恥ずかしい。私は履きかけた靴をもう一度脱いで、事務手続き中の武田理人さんの傍にいった。それからすぐ、呼び止められた理由に気づく。

「……ここも、書かねばならぬのか…?」
「うん、そうよ。あ、ひょっとしてあなた……そうか、他に知り合い、いないのね……?」

事務員に付箋を貼って返された書類は、一箇所、必須記入項目が空欄だった。能力者としてこの学園で活動するに当たり、必要なバックアップをする人の署名欄だ。
ふと見上げた彼の顔は相変わらず無表情で、どこか寂しげに見えた。

「……よし、おっけ♪ その書類、貸して頂戴。」

刹那、もう一人の私が警鐘を鳴らした。泰花と香月くんのバックアップだけでも新米社会人の私は既にいろいろ必死だったのだ。一般人の私は偽身符が使えないから、仕事をしながら同時に鎌倉に来ることは叶わない。けれども時間は誰にも平等で一日24時間だ。

(ふふ、そんなことはわかってる。大丈夫、やってのけましょう!)

それでも私はそれを一瞬で思考回路から排除すると、ペンケースからペンと実印を取り出してサインした。そのまま、お願いします、と笑顔で事務員さんに提出する。

「よし、帰るか!それじゃあこれから、よろしくお願いしますね。武田理人さん。」
「…………。」
「え、あ……ひょっとして、問題あった……?」

自分でも呆れるほど今更になって急に不安になる。思えばちゃんと彼の口から聞かずにサインしてしまったのではないか!?

「……問題ない。だが、何故……?」
「だって、初めて会ったとはいえ、寂しそうでほっとけなかったんだもん。」
「…………寂しそう、だと?」
「うむっ。寂しそうなんだもん、あなた。全然喋らないし、表情も変わんないし。」

問題ないという一言に一安心。でも次からはちょっと気をつけようと思いました、まる。

「それに、せっかくお会いしたご縁だもの。お役に立ちたいのよ。」
「……そなたは、私の巫女ではない。」
「うん、あなたの巫女じゃないけど役に立ちたいんだ♪ ほら、現代のことなら何でも知ってるから頼って頼って?能力者のことだって、土蜘蛛の事だって、あたし分かるよっ。」

私は一生懸命笑顔を心がけながら、いっぱい喋りながら校門を出た。大学時代、臨床心理学や心理カウンセリングで倣ったことを思い出しながら、少しでも武田理人さんに緊張を解いて話してもらえるように努める。

「それにね、この学園にふたり、仲の良い能力者の子がいるの。他にも何人か知り合いもいるし、今度紹介するね!それから……」
「……まりあ。」
「へ?あ、はいっ。」

うぅ、またしても間抜けな返事をしてしまった……。けれども名前で呼ばれるとは思っても居なかったのだから仕方がない、ということにする。
私と並んで歩いていた足を止め、彼がまっすぐ私を見た。切れ長で鋭いその目つきは、多分間違いなく他意はないと分かっててもどっきりしてしまう。
ふと、狩衣の袖が動いて私の頭に触れた。

「……今後とも、よろしく頼む。」

大きな手の、優しいひと撫で。

「あ、は、はいっ!こちらこそっ!!」

子ども扱いされた気がしないでもないけど、この際それは記憶の彼方に蹴り飛ばしておくことにして、私はにっこりと笑顔を返した。
だって……初めて、彼の目元が和らいだから。
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