月城まりあの手記

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その大気の下で……

ふと振り返れば、レンのSSを全然書いてませんでした。
ということで漠然と温めていたイメージを文章に起こしてみました。
アンオフィシャルな背景設定として、銀誓館学園の学生である泰花達にとっては私はいわゆる後見人ポジションにいるわけですが、レンは同い年なのでちょっと違うのです。一方的に支えるのではなくて、少し持ちつ持たれつなところがあるような、そんな感じを想定していて。それをこのSSで描けていればいいなと思います。(あ、本編を読んだ後に誤解が無いように断言しておきますが、当然恋仲設定なんかじゃないですからね!?)
……というか、私の文才の無さに涙が出てくるのですが…。誰か師匠になってくださいorz


SSを書いている最中のBGMは、普段はあんまり流さないんですが、今回はSound Horizonの「イドへ至る森へ至るイド」を流していました。延々とエンドレスループで。だって歌えるようになりたかったんだもん。

レンと私の始まりの物語は、追記よりどうぞ。



 アクスヘイムの茜空が少しずつ宵闇に沈んでいく頃、建物の屋根に登って空を眺めるのがレンの日課だ。レンは空が好きなのだ。勿論、下層階の空よりは本物の空のほうがいいし一番好きな空を尋ねればよく晴れた青空だと答えが返るが、昼間は荷物を届けたり犯罪者を追ったりと空なんて眺めている暇が無いのだから仕方がない。その代わりにこうして夜闇に沈む直前の空を僅かな時間眺めてみるのだ。そしてこうして空の下で涼しい風に吹かれるのも気持ちが良いからと、何度と無く繰り返すうちにいつしか日課になっていった。
 その日課も今日は少しだけ事情が違った。そろそろ、約束していた友人が登ってくる頃だろうか……。
 「……んしょ、お邪魔しまーす。」
ふと聞こえた声に振り返れば、レンと同い年くらいの女性の姿。彼女は梯子を音を立てながら登りきると、不安定な足取りでレンのほうへと近づいた。
「気をつけて。」
 レンは少しだけ屋根を下り、手を伸べて彼女の歩みを支えた。彼女は一瞬目を見開いたが、すぐに笑顔を見せて礼を述べた。
「ありがとうございます、レン。」

          *          *

 二人の出会いは偶然だった。今を遡る事半年程前のことだ。
 『あの、恐れ入りますー。』
不意に聞こえた高い女声に目を覚ませば、樹下から声の主がこちらを見上げていた。レンは午睡を中断し、一足で地に降り立った。
 彼女はいたって普通の女性だった。エンドブレイカーというわけでもなさそうだし、アビリティを使えるほどに鍛錬を積んだ様子でもない。見慣れない東方伝来の着物を纏っていることを除けば、ごくありふれた素朴な女性だった。
 そんな女性がこんなところ――レンは旅団近くの樹上で貴重な昼寝をしていたのだ――にやってきて呼びかけてきたことを不思議に思いながらも、レンは静かに歩み寄って声をかけた。
『どうした?こんなところで……道にでも迷ったのか?』
『あ、えと……はい。探し物をしてたら、何処まで来たのかわかんなくなっちゃって。』
 女性の背丈はレンより30cmは低かった。初めのうちは黒い双眸でまっすぐに見上げていた彼女は、語尾に近づくに連れ段々俯いていった。
『えと…わたし、東方の地域の生まれで、ここには来たばっかりなんです。だから地理とか全然分かんなくなっちゃて……。』
『…宿は?』
『え?』
『遠方から旅をしてきたなら宿を借りているだろう?そこまで送っていこう。』
 レンの言葉が進むにつれ、女性の表情が驚きへと変わり、また歓喜の笑みへと変わった。
『本当ですか!?ありがとうございます!』
 勢い良く頭を下げて礼を述べた彼女は、満面の笑みを湛えて名乗った。
『わたし、マリアって言います。マリア・ツキシロ。よろしくお願いします!』

          *          *

 「あれから、もう半年とひと月くらい経つのかなぁ……はやーい。」
「ほう…のんびり屋の貴女さえも早いと思うんだな。確かに、何だかんだと疾風のように過ぎてしまった。」
「むー、レンちょっと酷いですよ?他の女の子にはそういうこと言わないのにっ。」
「おっとすまない。ついうっかりな。」
「えー、何それ~!?ひどくな~い!?」
 口先では酷いのなんのと言い合いつつも、二人の表情は笑顔だ。いつもの二人のいつものやり取り。けれども、不意にマリアの表情が曇った。
「……やっぱり、行っちゃうの?8月1日の。」
「無論。」
 短い応答に、マリアはそっか、と微笑んで見せた……とても悲しげに。それでも、レンの横顔は変わらない。
「……私はエンドブレイカーだからな。見てしまった以上、あのエンディングは防がねばならん。」
「でもレンは、エンドブレイカーである前に、レンなんだよ…?わかってる……?」
 マリアの微笑みが僅かに変わる。レンは返事をしなかった。マリアはまた正面に向きなおすと小さく溜息を漏らして呟いた。
「あなたの記憶探しもまだ途中なのに、妹さんとも再会したばかりなのに……何か前もって力になってあげたくても、わたしにはあなた一人のエンディングすら見えないんですものね。ちょっと不公平だわ。」
 隣で、微かに衣擦れの音がした。立ち上がったレンを一瞥して、マリアも着物の裾をはたきながら立ち上がった。
「そろそろ夜も更ける。宿まで送ろう、マリア。」
「ありがとうございます。でも、今日はまだちょっと明るいから大丈夫。あんまりわたしと二人でいると変な誤解だってされちゃうだろうし。そんなんじゃレンも困っちゃうでしょ?」
 それではおやすみなさい、と告げてマリアは一人梯子へ向かった。その背に、ふと声がかかる。
「何があろうとも、きっと帰ろう。皆のためにも、貴女のためにも。」
「……ありがとう。そうだ、何か要るものがあったら教えてね。次もまた頑張って調達してくるから!」
 小さな拳を振り上げて任せなさいと笑うマリアに、レンも穏やかな微笑を向けた。

 マリアが路地に降りた後、振り仰いだ屋根の上にもう人影は無かった。
「流石スカイランナーね……あんなふうに身軽に動き回れたら気持ちいいだろうなぁ~。……いつまで、そんなレンを見ていられるのかなぁ…?」
ひとり呟き、マリアは改めて帰途に着いた。
 少し強い風がその傍らを吹きぬけた。
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ゲーマー&ドールオーナーの、日記のようなblogです。たわいもないことをつづっています。
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ボークス製球体関節人形「スーパードルフィー(Super Dollfie)」が好きな初心者ドールオーナー。他社・海外ドールも興味はあるけれどまだまだ無知で恐縮です。
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さらに、のんびり屋審神者でもあります。
イベントは全力で、普段はゆるゆると、刀剣男士たちと過ごしています。