月城まりあの手記

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夏空の詩

折角マビノギの記事を書いたので、久し振りに非公式SSも書いてみる事にしました。
突発的に思いついたお話ではあるけれど……リハビリを兼ねて掲載。

後半に書いてあります。時間経過としては以前の「白雲の詩」の続きのイメージ。
お楽しみ頂ければ幸いです。



エリンは、それほどはっきりとした四季の移ろいが無い。季節そのものが無いわけではないけれど、皆で意識して四季の行事をやりでもしなければ、気がつくと1年が過ぎている。それでも、夏になれば暑い日々が続くし、冬になれば寒い日々が続く。今は初夏、Lunamariaは頬を伝う汗を拭って、それまで手にしていたふるいを片付けた。ここはネコ島の海岸。照りつける太陽と白波が眩しい昼下がりに、彼女は己の精霊のために鉱物採集に精を出していた。

「よし、こんなもんかな? ……Noir」
「ようこそ、Lunamaria……」

代わりに手にしたのは精霊クレイモア。彼女の呼びかけに、精霊のNoirは静かな声音で応えた。

「今日もまた宝石いっぱい採れたわ。プレゼントするね」
「ありがたい」
「大して大きくないから、役に立たないかな……? 」

Lunamariaが自信なさそうに手のひらいっぱいのこまごました宝石を差し出すと、Noirは礼を述べてそれを吸収し始めた。しかし直径1cm程度の小さな宝石たちでは、Noirの知識にするには最早まったく足りていなかった。それでも感謝の意を表してくれた精霊に、Lunamariaはばつの悪そうな笑みを浮かべて言った。

「ごめんね、ちゃんとしたものをあげられなくて……今度、ちゃんと探してみるね」

それからLunamariaは、傍で一緒に鉱物採集をしていた青年を振り返った。海面のように澄んだ青いサシャローブが、まだちいさくなってひょこひょこと動いていた。

「セフィ、調子はどう? 暑くなってきたし、少し涼しいところで休まない? 」
「ルナさん……ああ、そうか。もう一番暑くなる時間ですね。そうしましょう」

彼女のアシスタントエルフ、Sefiliaは呼ばれて振り返ると額の汗を拭って頷いた。

「宝石はたくさん採れましたか? 」
「ええ、おかげさまで。鉱石の欠片もたくさん溜まったから、この後渡すわね」
「ありがとうございます。助かります」

2人は並んで集落のほうへ歩きながら、互いの収穫の報告をしあった。精霊のための宝石が欲しいLunamariaと、精錬修練のための鉱物が欲しいSefiliaは、この島で鉱物採集をすると互いに互いの副産物が役に立つのだ。今日はひさしぶりに、Lunamariaからここでの採集を誘って2人で訪れていた。

「よし、ここにしましょ♪ 」
「そうですね、ここなら井戸も近いですし」

祠へと続く道の傍ら、優しい風が吹きぬける木陰に2人は腰を落ち着けた。今しがたの猛暑が嘘のように此処だけは涼しさを保っていた。LunamariaはSefiliaに鉱石の欠片を全部渡してしまうと、早速井戸で水を汲んでランチの支度を整えた。良く働いた後のパンと爽やかな井戸水はそれだけでも十分美味しいものであった。

「んー、久し振りにセフィと一緒に来たし、もっと豪華なものを作っても良かったかなー? ごめんねー」
「いえ、気にしないで下さい。採集が目的ですから、食べ物も荷物も簡素でコンパクトになるのはしょうがないです。……それにしても」

不意に、Sefiliaが言葉を切った。不思議そうにLunamariaがその視線を辿ると、彼女の傍らに横たわる精霊クレイモアに行き着いた。Sefiliaはなおも暫くそのまま黙っていたが、Lunamariaが首をかしげたのに気づくと、ふっと微笑んで視線を元に戻した。

「……私が、また剣を取った事が不思議? 」
「ルナさん、世代交代を意識なさっていたのではありませんでした? 」
「ええ、そうね。でも、ひとつの答えに行き着いたから、もう一度剣を取っても良いかなって思ったのよ」

Lunamariaは、弁解するようだけど、と苦笑いして前置きをしてから、「行き着いた答え」を話し始めた。

『世代交代が赦されるのは、死があるからこそ』ということに彼女が気づいたのは少し前、春の頃だった。
Lunamariaが全く武器を持たなくなり、日々祈りと奉仕の中で過ごしている時、偶然エルフの村・フィリアを再訪する機会が訪れた。その時のSefiliaは請け負ったクエストで奔走していたので、彼女は単身カスタネアの元へと発った。
……長い話なので要約してしまうと、要するに『死んでいないうちに未来を探求するのを諦めるのは気が早い』ことを、カスタネアとアトラタの手伝いをするうちに実感したという事だった。

「だからね、記憶をなくして混乱してしまったわけでも無いし深手を負って死んでしまうことも無いのだから、もっと探検したいように探検して、後輩たちとも旧友達とも充実した毎日を共有できればそれが実は最善なんじゃないかって思ってね。……えへへ、結局ふりだしに戻ってきちゃったの」
「な、なるほど……」

一通り聞き終えたSefiliaは数度目を瞬かせると、ふっと口の端で微笑んだ。軽く安堵の息をついて、彼は嬉しそうに口を開いた。

「ともあれ、そういう話なら安心しました。何か一大事に巻き込まれたわけでもなく、またルナさんと一緒にエリンの中を駆け巡れる事になって、正直なところ嬉しいです。僕、このまま引退宣言するんじゃないかと気が気じゃなかったんですよ? 」
「あははは……ごめんね、そんな心配させて。でも大丈夫よ。前にも言ったでしょう? 引退なんかしないよーって」
「そう言われていても、あれだけ大人しい生活をされたら不安になるというものです」
「あはははは……ごめんね」

申し訳なさそうに笑うLunamariaを、Sefiliaは柔らかな表情で受け止めた。

「それじゃ、午後の部と行きますか、セフィ」
「うーん……折角ですから、どこかダンジョン探検にでも行きたい所です。採集は、もう結構採れましたから」

立ち上がって土埃をはたくLunamariaに、Sefiliaは別の提案をした。それを彼女も快く承諾すると、早速精霊クレイモアを背に負った。

「そうね、わかったわ。私も久し振りの戦闘だから、まずは感覚を取り戻さなくちゃね。頼りにしているわよ? あなたの弓」
「ご冗談を。僕よりは火力も経験も十分あるじゃないですか、ルナさん。大丈夫ですよ、さあ行きましょう」

軽やかな笑い声が2つ、夏空の下に響きあった。
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ゲーマー&ドールオーナーの、日記のようなblogです。たわいもないことをつづっています。
About me
ボークス製球体関節人形「スーパードルフィー(Super Dollfie)」が好きな初心者ドールオーナー。他社・海外ドールも興味はあるけれどまだまだ無知で恐縮です。
我が家には春歌(MSDG サクラ)、きよし(SD13B リンク)、ちか(幼SDG ちか)、幸彦(SDGrB F-30)の4人が居ます。

他にも、オンラインゲーム「マビノギ」が大好きというゲーマーでもあります。タルラークサーバにて暮らすようにプレイ中。家事の合間に農園や楽器演奏などをしてのんびり暮らしています。

さらに、のんびり屋審神者でもあります。
イベントは全力で、普段はゆるゆると、刀剣男士たちと過ごしています。